2024年3月28日木曜日

《逢華妖麗譚-不知火語》語り


 昔むかし、武者が刀やお祓いで妖魔を退治していた頃。


人の世を掠略せんとする魑魅魍魎を


不知火(しらぬい)流」の武士が退け、


此岸に平和が訪れた。




それから数代の後。


不知火流の当代:武部(もののべ)


古い社において、記憶を失い、衰弱した少女と出会った。


武部は、自分と同じ年頃の彼女を暖かく迎えることになる。




しかし、彼女こそが、かつて人の世を我が物としようとした一族


魔妖(まやかし)」の長である妲己(だっき)であった。




二人とも、互いが自らの宿敵であることに、薄々気づいているかもしれない。


また、妲己はなぜ記憶が無いのか。それとも忘れた振りをしているだけなのか。




だが、今はそれでいい。


最終的には刃を首に当てることになったとしても、


長い時間の中で、このひとときが二人の心を暖める日は


きっと来る。